こんにちは。
「妊娠したのですが、骨盤を整えておいたほうが良いですか?」
「産後、骨盤を整えたくて…」
整体をしていると、よくこのようなご相談を受けます。
このブログでは「妊娠中・産後の骨盤矯正」についてお話します。
結論から言うと、妊娠中・出産後の骨盤は整えることも一手段ですが、それよりもまず、そもそも整うものであるという大前提があって、身体との距離感、自分の身体の欲求を感じ取ることができれば必ずしも整体は必要ないよということです。
多くの方が忘れがちなのは、骨盤は整えようとするものではなく、「整うもの」であるということ。
このあたりの話を僕の経験談を踏まえてお話し出来ればと思います。
余談ですが、今日たまたま産後すぐの方が3人連続で来られて、このブログで書くような話を3回連続ですることになったので、1度書き留めてお伝えできるようにしておこうという魂胆もあります😏笑
なにかしら参考になれば幸いです。
●音声バージョンもあります↓
なぜ骨盤が着目される?
妊娠中の骨盤は子宮の受け皿として大切な役割を担い、経膣分娩の場合は「産道」として骨盤は大きな力が加わります。
妊娠中では、安定期(妊娠16週)前の妊娠初期(骨盤が緩くなり始める時期)と、お腹が大きくなってくる妊娠後期に骨盤周囲の痛みが出易い傾向があります。
出産後には産道を通る負荷によって、骨盤が開くので、出産方法にもよりますが、相当の力が加わります。
その負担から骨盤周囲の痛みや違和感が出やすいので、そうした背景から、骨盤は着目され骨盤を戻すことが大切だ!という論調が生まれ、「骨盤を戻さないと更年期症状が強くなる」という根拠があるのかどうかも怪しい話が当たり前のように出回っています。
僕は産後の骨盤と更年期症状は直接関係ないと考えていますが、関係があるとすれば、産後の骨盤状態が過剰に気になる方は更年期症状が出やすい傾向にあると思います。それが悪いわけではありませんが、傾向としてです。話が逸れていくので、本題に戻します。
「整える」でなく「整う」
妊娠中〜出産後には骨盤に大きな負荷がかかることは容易に想像ができますが、そもそも骨盤を整えるとは、どのようなことを意味すると思いますか?
もしかすると、あまり深く考えることもなく、「なんとなく骨盤を整えた方が身体に良さそうだから」みたいな感覚で骨盤を考えている方もいらっしゃるかもしれません。(結構多かったです)
骨盤を整えるとは、整体や体操などで骨盤周りに刺激をいれて整えるもの?というのは、一般の方が抱くイメージかと思います。
実際そうなのですが、でもよく考えると、出産後に骨盤を整えよう!みたいな骨盤にスポットを当てることがなかった時代はどうでしょうか?
現代よりも2世代以上上になると、子沢山で10人兄弟という話もよく聞きます。
現代では骨盤ベルトや産後骨盤矯正なんか当たり前ですが、そんなものがなかった時代があったことも事実で、「現代人は身体が弱いから仕方がない」という専門家もいましたが、それならそれで、骨盤を整える以前に、ご自身の身体が本来ある骨盤を調整する働きを高めてあげることの方が重要なのに、やっていることは「骨盤を戻すと身体にいい」みたいなこと。
昔の日本人の身体はよかった!現代人はだめ。みたいな安易なことを言いたいわけではありませんが、このあたりは矛盾を感じざるを得ないところです。
骨盤は当然身体全体に影響はあります。
そもそも妊娠中は妊娠〜出産するのに適した骨盤に変化をしますし、出産後はその状況に合わせて骨盤を整えようとしています。
身体は自動的に「骨盤を調整しようとする」働きを働かせますが、そのための手段として、時に骨盤周囲の痛みを利用して動きに制限を加えたり、荷重位置を変化させたり、違和感を通して座り方や立ち方、身体を動かす方向や動かない方がいいかということをガイドくれています。
僕ら施術者もその働きを活用してしか施術出来ません。
ですが、骨盤はなにかしないとスムーズに出産は出来ないと思っていたり、出産後は骨盤を整体やベルトをしなければ元に戻らないと思っている方は多くおられます。
整体や体操によって身体を整えることが可能だとしても、それは「身体は常に整おうする働きが働いている」という大前提での話であるし、ましてや妊娠中だからといって特別な整体を補助的に用いることはあっても、それが絶対必要ということはないです。
過去産婦人科で整体をしているとき、妊娠中の骨盤を整えて欲しい。産後の骨盤を整えて欲しい。と相談をされましたが、その要求に対して何をすればいいのか正直よくわかりませんでした。
ですので、色々な骨盤の勉強会に出席してみましたけれど、それでも結局あまりその必要性を感じない。
妊娠中や産後の骨盤だけを整えることは出来ないし、妊娠前の身体と今は違うので、元へ戻すこともできないし、そんな意味もないし、整体で整えないと骨盤が戻らないということもない。
やれるとすれば、その時のその方の身体にとって必要だと判断した施術をすることなので、それをやってきたという感じでした。
まずは自分がどう感じているか?を感じないと…
妊娠中にせよ、産後にせよ、その時の自分の身体がどういう状態になっているか?を掴むことがまずは大切で、そこが感じ取れるほど、微細な変化も調整されやすく、結果として身体が骨盤を整える働きがスムーズに運びます。
自分の身体がいま、右に寄っているか、左に寄っているか?前後のバランスはどうか?
日頃の自分の身体がなにを欲求しているか?を感じてますか?ということです。
例えば、母子ともに異常所見がない方であれば、妊娠中であっても日常的に身体を動かしたいな…という欲求が出てくると思います。そうした方は妊娠期間中、過度に安静にしがちで、一部の筋肉にしか日常使わずコリ固まっているかもしれません。
あるいは、妊娠中に仕事で忙しい方であれば、目を閉じてゆっくり休みたい、リラックスするためにヨガなどで軽く身体を伸ばしたいという欲求が出てくる方は、仕事で頭が忙しかったり、妊娠出産関連のをネット検索して余分な情報を入れ過ぎかもしれません。
妊娠期間中や産後は、ネット情報としてさまざまなことを言われていますが、その情報を基準にするのではなく、まずは自分の身体がなにを求めているのか?を大切にするべきで、それがわからないときには然るべき専門家に助言を求めるのがいいでしょう。
この辺りの感性については下のブログでも述べているので、併せてみてください↓
妊娠中は、切迫流産や切迫早産などで主治医から絶対安静支持が出ていない限りは、月並みですが身体は適度に動かすに越したことはないです。
ここでいう身体の「動き」とは散歩や体操といった運動もそうですが、自分がやりたいって思ったことを「妊娠してるしな…」ということを理由に制限をかけ過ぎないことが大事です。あくまで健康体ですから。
少し余談ですが、
僕は産婦人科に初めて行った日に産婦人科の院長に「妊婦さんだから安心して好きに施術してくれていいからね」と言われて、当時ハッと気付いた経験があります。
何が言いたいかというと、妊娠は病気ではないということです。
今思えば、至極当たり前の話ですが、それまで妊婦さんを施術する機会がほぼなかったので、妊娠中=施術も運動も制限されるものという感覚でしかなく、およそ医療者としてはかなり勉強不足の状態でした。
よくよく考えれば、高齢者の方が持病を持たれている方も多いわけで、妊婦さんよりそうした方達の方が病気がちであるとも言えます。
むしろ、なぜそうした人たちへの慣れや油断として安心していただけで、その方がもっとあり得ないことで、そうしたことを含めて学びになりました。
どちらが健康で健康ではないか?という話ではなく、妊婦さんだろうが、高齢者だろうが、子供だろうが、施術する立場としては一人一人緊張感を持ってやるべきだということです。
産後の骨盤矯正は必要ない
上でも少し触れましたが、僕は産後に骨盤を整える必要は必ずしもありません。
産後の骨盤の調整が必要な場合はありますが、それは絶対に必須ではなく、意識するとすれば、産後に数週間はお母さんがゆっくりリラックスして過ごせる環境作りを妊娠中からできる限り整えておくことで、産後2〜4週間ほどの安静期間である程度骨盤は整ってくれます。
昔はこれを「床上げ」と呼んで、家族みんなで出産したお母さんの身の回りのお世話をしたそうで、これは現代生活では簡単なことではありませんが、とても大切だと考えています。
え?産後の骨盤はベルトや整体をしないと戻らないでは?と思うかもしれませんが、そんなことはありません。それらは補助的に骨盤を整える意味合いはあるにせよ、それ自体に骨盤を戻すようなものではないです。
むしろ、不必要な刺激になることも多いので、僕は妊娠中も出産後もベルトの使用はおすすめしません。
このあたりの細かい環境作りや実際の例などは詳しくは僕の考えをまとめた本『自宅出産を経て』があるので、ご興味あればお問合せページよりご連絡ください。10冊ほどですが、まだ手元にあります。
妊娠中や産後に整体へ行く意味は?
ここまで、骨盤は整えるものよりも「整うもの」で、出産後の骨盤矯正は必ずしも必要はないというお話しをしました。
じゃ整体いく意味ないんじゃないの?と思われる方もいるかもしれません。
一般的には整体に通う意味は、身体を整えてもらいに行く、不調を改善してもらう、疲労を取ってもらうなどで通う方が多いと思います。
妊娠中や出産後に関わらず身体に不調がある時は、どこかの部位に身体の動きに滞りが生まれスムーズに動いていないことがほとんどで、その偏った動きを整える意味で痛みが出ていると考えられて、その滞りがどこにある?を知るために整体に通うのが大切な目的の一つと言えます。
僕も例外なくそうですが、長年この整体の仕事をしていても自分の身体の滞りがどこにあるのか?自分一人で知ることはかなり困難です。
なので、時々僕も信頼できる先生に身体を診てもらっていて、客観的に自分の身体や、今のメンタル状態を見つめ直す貴重な時間だと思っています。
ここに整体に通う大きな意味があると考えていて、もっと言えば整体を通して、今の自分の身体(心身の状態)を客観的に知ることが出来ます。自分の状態を知ることそのものが、経膣分娩でも帝王切開でも、その後の身体の経過に大きく関わります。そういう意味でも整体の先生には定期的にでも身体をみてもらったり、相談するのは良い機会になるはずです。
これは整体院選びのポイントとも言えるので、それはまた別の機会でお伝えできればと思います。
妊娠中や出産後に身体や育児のことで悩んだ時に相談できる医師や助産師さん、整体の先生を見つけてご自身の生活に活用していただければなと思います。
今日は妊娠中〜出産後の骨盤についてお話しました。
ここで書いたこと以外にも思うことがあったり、個別ではまたもっと細かいお話しは色々とできるので、もし個別にご相談があればご連絡ください。
今日は以上です。
それではお達者でー😊