こんにちは。
整体庵大空の下大前です。
今日は「治療方法を選択するときに大切なこと」というテーマでお話したいと思います。
結論としては、『治療法を治療法として成り立たせている働きを知っておくこと』で、これは治療法選択で悩む以前に理解しておきたいところです。
よくあるお悩み相談で、「どの治療がいいと思いますか?」という質問を受けることがあります。
このご相談はなかなか答えにくいことでして、その治療方法の特徴や、同じ病状でもその方の生活背景や、なにを大切にされているかによっても大きく変わるので、一概に「この病状にはこの治療法がベスト」とは言えないんですね。
その時に大切なこと(忘れがちなこと)が『治療法を治療法として成り立たせている働き』なんです。
なかなか一言ではわかりにくいので、順を追ってお話していきます。
消去法的に治療法を選択すべきでない
ご経験がある方も多いかもしれませんが、
同じ病状でも、いくつかの治療方法があって、先生から「どうされますか?(どの治療法を選択されますか?)」と判断を委ねられることがありますよね。
医療では、インフォームドコンセントといって、患者様に現状や治療法の長所・短所などを説明して、同意を得た上で治療を行うための、プロセスです。
また、西洋医学や東洋医学など、そもそも治療の考え方からして違う手段もあったり、調べれば調べるほどわからないし、聞けば聞くほど迷うことがあると思います。
先日も、股関節痛を治療中のとある患者様(80代 男性)からこんな相談を受けました。
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「手術(人工股関節)以外で、なんとか早く治す方法はないかな?」
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当然、僕のような整体師にこの質問をする背景には「手術はしたくない」という意志が透けて見えます。
そこでよくよくお話し聞いていくと、この方は他の治療院さんで股関節の治療を半年ほど行っており、今回はセカンドオピニオン的に来られた方で、お仕事は料理人であり、趣味は登山とのことでした。
ちなみに今は、股関節痛で仕事も趣味もできていなくて、ご本人の想いとしては、1日も早く仕事や趣味をやって楽しく過ごしたいということをおっしゃられていました。
この日、施術させていただいた後も、痛みは軽減しスムーズに動けていたので、おそらく、時間さえかければ施術で、料理もゴルフも十分にできると予想はできます。
でも…
この方の希望としては「早く」仕事に復帰して、ゴルフを楽しみたい。
昔、整形外科での勤務時代にたくさん人工股関節の手術を見させてもらった経験から、痛みを早く改善して生活を送るなら(多少運動制限はありますが)、この場合の手術はいい選択肢のひとつでもあります。
諸々そうした背景から、今回は手術という選択肢のメリットをお伝えして、再度考えていただくことにしました。
整体師という立場から、僕に手術の話をされるとは思われていなかったのか、少し怪訝な表情をされていましたが、率直に話をしてご家族と一緒に全ての選択肢をあらためて考え直してみるということで治療を終えました。
そして、なぜ手術をしたくないのか?という話をお聞きしたところ、手術をすると、リハビリに時間がかかりそうだし、人工物を身体に入れる恐怖と皮膚に傷が入るのが嫌だからということを懸念されていました。
とてもよくわかります。身体を傷つけて人工物を入れることが心地がいいとは言えません。
ここで人工股関節置換術についての詳細を述べることは避けますが、整形外科での経験上、術後翌日で歩行を開始できたり、痛みの改善が大幅であったりなど、デメリットもあるもののメリットも大きいんですね。
皮膚の傷は仕方ありませんが、比較的小さめの傷で済む方法もあり、人工股関節の耐久年数的にも十分だと考えられます。
端的に言うと、
この患者様は、手術以外の治療で「治したくて」選択したのではなく、手術のリスクから消去法的に「手術以外の治療を選択をした」結果、整体に来られたということになります。
これが決して悪いというわけではなく、ここは誤解しないでいただきたいところなのですが、
僕としては、単に手術という選択肢を勧めたくて、手術の話をしたのではなく、あらためて全ての選択肢を机の上に並べて、自分がどういう生活を送りたいのか?をよく考えた上で「自ら」選択をしてほしいなと思ったので、あえてこの患者様が避けていた選択肢を再提示するという意図で「手術」の話をしたわけです。
決して、整体施術よりも手術が良いから手術した方がいいよ。というような良し悪しを僕の個人的感覚でお話したわけではないことはご理解くださいね。プロセスが違うだけで、どちらでも良くなる可能性は十分あります。
治癒力を左右する自発的選択
別の症例で、2人の女性患者様で、ほぼ同年齢で、同程度の変形性膝関節症で手術をされた方々がおられました。
AさんもBさんも、同様の人工膝関節置換術をされ無事に手術は終了したのですが、
Aさんは自ら早く歩き回りたいので自分から望んで手術を希望されたのに対して、Bさんは担当医や家族さんなどに勧められて(本人は嫌がっていた)仕方なく手術を受けました。
そして結果はどうだったか?
手術自体は御二方とも問題なく終えたのですが、Aさんは術後1ヶ月たたないうちにスタスタと歩き回れたのに対して、Bさんは2ヶ月が経っても傷の疼きや関節周囲の痛みなどで、手術前同様あまり積極的には歩けない状況でした。
ほぼ同じような症例・治療法にも関わらずです。しかも治療自体に限って言えばうまくいっています。
この違いは「個人差」などで片付けない方がいいことだと個人的に思っていて、自発的に自ら選択して進むということが、僕らの治癒力に大きく影響しているというのが伺える事例だと思います。
そして僕たち医療の専門知識を持つ人間(発言に重みのある人間)は、患者様が「自発的に」治療を選択することの大切さを思った以上に痛感しておいた方がいい。
治療が必要と感じて通院するのか。それとも、先生に来なさいと言われたから通院するのか。その差は天と地ほどの差が生まれることを理解しておかなければいけません。
人(先生)に勧められたから選ぶ。
みんなが選んでいるから選ぶ。
Aは怖いからBを選択する。
その消極的体験から学ぶこともあるとは思いますが、まずは自分がどんな日常を望んでいて、そのために自分としてもっとも選びたい選択肢はどれか?自ら考え、自らを疑い、自ら選択することは、思った以上に僕たちの身体に大きく影響していると考えられます。
医療を医療たらしめる働き
全ての医療に共通して言えることですが…
医療は医療単体としては、身体を治療する作用はありません。きっかけにはなりますが、治す力はないと断言できます。
それは、僕たち治療を受ける側の「身体」に医療に医療効果をもたらす働きがあるからです。
こういうとわかりにくいですが、
シンプルに手術をして縫合するのはドクターのお仕事ですが、縫合後に傷口を治癒させているのは「身体」です。
擦り傷は絆創膏に、傷を治す効果はありませんよね。
自然に血が止まり、かさぶたになって治ります。絆創膏は保護しているに過ぎません。(それも重要なことです)
身体(生命)があってはじめて医療が医療になり得るのであって、医療単体ではその効果を発揮できることができません。これを考えると、先程お話した「自発的に治療法を選ぶ」ことが治癒力に大きく影響することの意味がよくわかるのではないでしょうか?
医療や医療者には人様の身体を治す力なんて持っていなくて、治しているのは一人一人の身体であり、生命の働きです。なので、僕は今「生命を学ぶこと」が自分の探求テーマになっています。
どの治療法にも、当然長所や短所があって、その長所は、当然短所にもなり得ます。
なので、自らが自らの価値観で、自発的に選択することが重要であり、今の超情報過多の時代ではとくにこのことが大切ではないでしょうか。
まとめ
今日お話させていただいたことは、病状の治療方法だけではなく、人生の選択を迫られる場面でもとても重要なことであると思います。
人の意見を聞いて、それに従って選んだ道で思い通りに行かなければ誰かのせいにする。その誰かは当然責任を取ってくれることはありません。自ら選択して盛大に失敗すれば、その失敗からたくさん学ぶことがあるでしょう。
偉そうにここまで綴ってきましたが、僕自身が大切にしたいことだったので、自戒を込めて書きました。
みなさんに日常に、なにかしらヒントやリラックスめいたものがあれば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。
また興味があれば、僕のブログやラジオを覗いてみてください。